『九条の大罪』は、社会派漫画で、法律の裏側と人間の闇や欲望を生々しく描く話題作で、闇金ウシジマくんの作者・真鍋昌平氏によるビッグコミックスピリッツ連載漫画です。
弁護士として働く九条 間人を中心に、裏社会の人間やエリート弁護士、過去を背負った依頼人たちが登場します。
この作品は、ただの法廷ものではなく、「正義とは何か」「罪とは何か」を問う人間ドラマです。
今回は、『九条の大罪』に登場する主要人物たちを、背景や人間関係を交えながら詳しく紹介します。
九条 間人(くじょう たいざ)
本作の主人公であり、弁護士を生業としています。
しかし彼のスタイルは常識から大きく外れており、いわゆる“厄介案件”ばかりを扱う異端の存在です。
殺人犯、半グレ、暴力団関係者、さらには詐欺師までも依頼人として受け入れます。
九条は、東京の雑居ビルの屋上にテントを張って暮らしており、弁護士らしからぬ生活をしています。
離婚歴があり、元妻と娘との関係は壊れたまま。それでも彼は“人間の罪”を直視し続けています。
彼の特徴は、法律の力を最大限に利用しながらも、「人間そのものの矛盾」に寄り添う姿勢です。
依頼人の善悪を問わず、ただ「助けを求める人」を弁護する。そのため、周囲からは“悪徳弁護士”と呼ばれることもあります。
しかし物語が進むにつれ、九条の行動が単なる悪ではなく、彼なりの“信念”であることが見えてきます。
「人を裁くのは法律じゃない、人間だ」
この言葉こそ、九条 間人という人物の核心を表しています。
烏丸 真司(からすま しんじ)
九条の事務所で働く若き弁護士。東大法学部を主席で卒業したエリートであり、将来を嘱望されていた存在です。
しかし、過去にある事件をきっかけに心のバランスを崩し、九条のもとに身を寄せるようになります。
理屈や理想を重んじるタイプで、最初は九条の型破りなやり方に強い反感を持っていました。
「依頼人を選ばない」という九条の信条を理解できず、何度も衝突します。
それでも、事件を共に経験するうちに、九条の“もう一つの正義”を感じ取り、少しずつ変化していきます。
烏丸は、九条の“正義の裏側”を映し出す鏡のような存在です。
彼を通じて読者は、「法の正義」と「人の正義」の違いを考えさせられる構造になっています。
優秀であるがゆえに苦悩し、理想と現実の狭間で揺れる人間臭さが、多くの読者に共感を呼んでいます。
壬生 憲剛(みぶ けんご)
自動車整備会社の社長として登場しますが、その裏の顔は裏社会と強くつながる男。
かつて半グレ組織を率いていた過去を持ち、現在も裏稼業の仲間たちと関係を続けています。
九条に弁護を依頼することで物語に関わりますが、彼の目的は単なる自己保身ではありません。
過去の因縁や組織との対立、そして家族への思いが複雑に絡み合い、やがて物語を大きく動かす存在になります。
壬生は、九条とは対照的に「力と金で生きる現実主義者」です。
しかし、九条と接するうちに、自分の中にもまだ“良心”が残っていることに気づく場面もあり、
彼の人間性は単なる悪人ではなく、深い哀しみと業を背負った人物として描かれます。
表と裏を自在に行き来する姿が印象的で、作品全体の緊張感を作り出す重要なキャラクターです。
流木 信輝(ながらき しんき)
九条の恩師であり、かつて弁護士として理想を追い続けた人物です。
現在は第一線を退いていますが、彼の影響が九条の生き方を形づくっています。
流木は、法律の力を信じ、正義のために弁護を行ってきました。
しかし、その理想が現実の壁にぶつかり、やがて九条に「真の正義とは何か」を考えさせるきっかけを与えます。
九条が時折見せる冷徹な判断や、依頼人を切り捨てない姿勢の裏には、この恩師の教えが息づいています。
流木の存在は、作品全体の“良心”のようなものであり、九条を語るうえで欠かせない人物です。
九条の大罪 全巻セット(1巻~14巻最新刊)まで
京極 清志(きょうごく きよし)
暴力団組織「伏見組」の幹部として登場する人物で、裏社会の“支配者”とも言える存在です。
九条と深く関わり、法律では裁けない力を背景に暗躍します。
京極は、常に冷静で、恐ろしいほどの洞察力を持つ男です。
彼の言葉一つで人が動き、組織が変わるほどのカリスマ性があります。
しかし、その力の裏には孤独と虚無があり、時に九条との会話の中で哲学的な一面をのぞかせます。
「法律なんて、強い者のためにある」
この台詞は、京極という人物の生き方を象徴しています。
九条との対立は、単なる善悪の戦いではなく、“法と力の哲学的対話”として作品に深みを与えています。
出雲(いずも)
物語の中盤以降に登場する新キャラクターで、九条にとって新たな脅威となる存在です。
伏見組の若頭補佐で冷酷な性格でありながらも勘が鋭く、容赦がありません。
情報操作や心理戦に長けており、暴力でも“知略”でも人を追い詰めていくタイプの人物です。
出雲の登場によって、物語は一気に頭脳戦の様相を呈します。
彼の動きが、九条と烏丸、さらには壬生らの関係性を揺るがし、
作品全体に新たな緊張感とサスペンスを与えています。
登場人物が映し出す“罪”と“正義”
『九条の大罪』に登場する人物たちは、誰一人として“完全な善人”ではありません。
九条は悪を弁護し、烏丸は正義に迷い、壬生や京極は己の欲で動きます。
しかし、それぞれが自分なりの正義を持ち、矛盾を抱えながらも生きています。
この作品が読者の心を掴むのは、「正義とは何か」という問いを突きつけ続けるからです。
九条の行動に違和感を覚えながらも、彼の言葉や姿勢にどこか共感してしまう——
それは、誰もが“自分の中の罪”と向き合っているからかもしれません。
まとめ
『九条の大罪』は、法と人間の矛盾を描いた傑作です。
九条 間人という一人の弁護士を通して、登場人物それぞれの人生と葛藤が交錯し、読者に強烈な余韻を残します。
登場人物たちは、単なる脇役ではなく、九条という男を照らす鏡であり、
その存在が物語をより深く、より重くしています。
正義の裏に潜む闇、人の業、そして“罪を背負って生きること”の意味——
『九条の大罪』は、それらを真正面から描く作品です。
読むたびに新たな発見があるので、ぜひ登場人物たちの背景を意識しながら作品を読み返してみてください。

